この記事で分かること
- 『部下のトリセツ』の内容が分かる
- 部下に対する自己開示・言い方・聞き方・育て方・接し方が分かる
それでは見ていきましょう。
もくじ
『部下のトリセツ』の基本情報
まずは『部下のトリセツ』の基本情報について見ていきます。
書名 :部下のトリセツ 「ついていきたい!」と思われるリーダーの教科書
著者 :浅野 泰生
出版月:2020/3/10
出版社:総合法令出版
定価 :¥1,540 (税込)
著者である浅野泰生さんのプロフィールはコチラです。
株式会社think shift代表取締役CEO
1972年生まれ。愛知県一宮市出身。ビジネスパーソンを自己実現に導く成長プロデューサー。新卒で国内最大級の飲料メーカーに入社。その後、職を転々とする。
将来のキャリアを見出せずにいた34歳のとき、業務システムの開発会社に一般社員として拾われる。「ここに骨を埋める」と365日休みなしで働き、入社から1年後、42人抜きで取締役に抜擢される。
このとき初めて本格的なマネジメントに従事するも、部下から総スカンを食らい孤立する。組織のリーダーとして部下を動かす難しさに直面。
既出の理論を鵜呑みにせず、実践を通して部下との関わり方を変えることにより成果に結びつける。
2014年には血縁関係のない創業者から会社を引き継ぐ。社員のポテンシャルを最大限に引き出すマネジメント手法で、長年赤字続きだった同社を就任初年度に黒字化。就任時から5期連続の増収を達成する。
軌道に乗っていた2019年5月、オーナーとの対立が表面化。突然、社長を〝クビ〟になる。
その翌月、何のあてもないまま株式会社think shiftを設立。同時に、前職で苦楽を共にした13名の社員が安定した環境を捨て同社に集結する。
現在は、これら自身の経験に基づいた独自のマネジメント理論を体系化。
経営幹部層を対象にした次世代リーダー研修『connect』などを展開している。
著書に『最強「出世」マニュアル』(マイナビ出版)がある。
-Amazon著者ページより抜粋-
- 思うように動いてくれない
- 自分の頭で考えようとしない
そんな部下の様子に頭を悩ますリーダーは少なくありません。
とはいえ、他人を変えることはできないので、リーダー自身が部下との関わり方を改善する必要があります。
本書では、そんな悩めるリーダーに必要な行動や考え方を解説しています。
『部下のトリセツ』の要約まとめ
本書は全5章で構成されています。
- 部下が安心する「自己開示」
- 部下が心を開く「聞き方」
- 部下をやる気にさせる「言い方」
- 部下を成長に導く「育て方」
- 部下が結果を出せるようになる「接し方」
順番に見ていきましょう。
第1章 部下が安心する「自己開示」
リーダー自身が思ってる以上に部下からしたらリーダーは怖い存在です。
部下を安心させるためにもリーダーの自己開示は不可欠です。
具体的には以下の通り。
喜怒哀楽を素直に出そう
部下とコミュニケーションを取る際は、あえてリーダー自身の喜怒哀楽を素直に伝えましょう。
なぜなら人は理屈よりも感情で動く生き物だから。
- ○○○してくれて嬉しかった!
- ○○〇な行動は悲しい・・。
ポイントは「その場で、状況・行動・印象を交えつつ伝える」ということです。
「負のオーラ」は出さない
喜怒哀楽を素直に表現する一方で、リーダーたるもの最低限の演技も必要です。
それは、悩んでいたり具合が悪そうなどの「負のオーラ」を出さないことです。
なぜなら、リーダーが元気なら周りは安心するから。
そのためには基本的な健康管理やストレスをためないことが大切です。
弱点やコンプレックスはさらけ出そう
人は自分の弱みをつい隠そうとしがちです。のちにそれが大きな問題や無理をすること繋がることもあります。
リーダー自身の弱点やコンプレックスは隠さず正直にさらけ出しましょう。
なぜなら人はもともと誰かの役に立ちたいと思っているから。
部下に仕事を任せることで自らの強みに気づくきっかけにもなる。
どんどん部下から教わろう
リーダーの中には知ったかぶりをする人もいますが、部下の力を借りるスキルも必要です。
虚勢を張らずに「分からないから教えて」と言うことで、部下は「この分野は自分の方ができる」と自尊心が高まります。
学びの姿勢を
部下に自分から学びに行こうという姿勢がない時は、まずリーダー自身が学んだことを積極的に部下に共有するようにしましょう。
その姿を見て自分も学ばねばと思えます。
また、学びを共有して意見を出し合うことで新たなアイデアが生まれます。
そのためには気軽に意見が言える環境づくりも大切です。
陰口は厳禁
部下へのフィードバックは直接伝えるのが鉄則です。陰口を言っても現状は変わりません。
部下も「あの人は陰で何か言ってるんじゃないか」という不安を抱くようになります。
また、直接フィードバックするにしても、飲み会で別人のように偉ぶったり説教しだすと部下は幻滅します。
どうせお酒の力を借りるなら、シラフでは言いづらい感謝を伝えるといいでしょう。
第2章 部下が心を開く「聞き方」
自己開示をしつつ、部下の意見や考えを聞く姿勢も重要です。
まずは話しかけやすい環境づくり
一番大切なのは部下がリーダーに話しかけやすい環境づくりをすること。
「いつでも声をかけて」と言ってるだけじゃ足りません。
そのためには、リーダー自ら積極的にコミュニケーションを取りに行く姿勢が必須です。
ホウレンソウもリーダーから率先してやりましょう。
会議で部下の意見を引き出す
会議で部下から意見が出ないことに悩むリーダーは多いそうです。
本書では会議で部下の意見を引き出しスムーズに意思決定する方法が詳しく解説されていました。
会議のルールを設ける
まず会議の質を上げ円滑に進めるため会議にルールを設ける必要があります。
- ポジションパワーを使わない
- 時間を厳守する
- 事実、データに基づいて論じる
- どうすれば可能かを語る
などなど、それぞれの職場に適したルールを定めてみましょう。
付箋ワーク
とはいえ、若手や消極的なメンバーは会議では縮こまりやすくなり周りの目を気にしがちです。
いつも以上に「言いたいことを言いやすい」環境づくりが求められます。
より意見を出してもらうために本書では「付箋ワーク」をオススメしています。
付箋ワークとは、あらかじめ自分の意見を付箋に書き出してから発表してもらうスタイルです。
メリットは以下の通り。
- あらかじめまとめてるので考えながら話す必要がない
- 時間短縮になる
- 急にあてられてしどろもどろになることもない
- 先に出た意見に左右されない
- 全員の意見を聞ける
また、リーダーやベテランは若手の発言を遮らないようにしましょう。
若手は自分の意見を持っていても先輩の意見を聞くと「先輩の言うことが正しいかも」と引っ張られやすいです。
あえて話さず見守ることもリーダーの役目と言えます。
意思決定のプロセス
そうならないために、意思決定のプロセスを決めておきましょう。
意思決定のプロセス
- 意思決定者を決める
- 全ての意見を出し合う
- 意思決定者が決断する
- 参加者全員が決定事項を「正解」とすべく行動する
とはいえ、最終的な決断はリーダー(責任を取る人)がすべきです。
逆に言うと、リーダーは決めたことを誰かのせいにしてはいけません。
また、中には「絶対やらない!」と反発するメンバーもいるかもしれません。
そんなときは個別に話をしましょう。
なぜなら、意見そのものに反対しているというより説明が不足してたり誤解が原因の場合が多いからです。
第3章 部下をやる気にさせる「言い方」
ここでは、4つのタイプ別に部下に対する言い方を見ていきましょう。
- 無駄なことが嫌いなタイプ
- 自分の好きなことしかしないタイプ
- 何をしたらいいか分からないタイプ
- やる気がなさそうに見えるタイプ
1) 無駄なことが嫌いなタイプ
こんな感じで、若い世代は「何のためにやるのか」「どんな意味や目的があるのか」を気にする傾向があるそうです。
いいからやれ!が通用していた世代のリーダーはこれに戸惑うことも少なくないとか。
とはいえ、決してやる気がないわけじゃないので、その性質を逆手にとって仕事の目的をちゃんと伝えてあげましょう。
- 意義のある仕事なんだ
- チームに貢献できるんだ
と感じられれば率先して動いてくれます。
2) 自分の好きなことしかしないタイプ
このタイプには、働く上で
- Will(やりたいこと)
- Can(できること)
- Must(やるべきこと)
を区別して考えさせる必要があります。
そして、「まずMustがしっかりできてからWillが主張できる」ということを教えましょう。
また、Canを増やすことも大切です。
いつまでも同じことしかできないのでは社会人として評価されません。
3) 何をしたらいいかわからないタイプ
このタイプは部下への期待を具体的に文書化して渡すのが効果的です。
なぜなら、求められてることをハッキリさせれば人は迷わないから。
不思議と迷いはなかった。
やるべきことが1つに絞られていたから。
それにこんな風に誰かに必要とされ、期待されるのは初めてだったから。
その後は面談で達成度合いを確認しましょう。
さらに部下本人のWillを、会社の方向性を考慮しつつ尊重するとますます動くようになります。
4) やる気がなさそうに見えるタイプ
このタイプは、実際にやる気がないかどうかが問題ではなく、やる気がないと思われてしまうことが問題ということ。
その場合、自分の行動が「やる気がない」という評価につながっていると本人が認識していないことが多いです。
なぜなら、常識や当たり前は世代によって差があるから。
部下世代の”普通”が、リーダー世代には”やる気なさそう”と見られることもある。
まずはそのことを本人に教えてあげることが先決です。
第4章 部下を成長に導く「育て方」
本書では多くの「育て方」が記されていますが、ここでは
- 自分で考える力
- 人の良いところを見つける力
この2つにフォーカスして紹介していきます。
1) 自分で考える力を育てる
働く上で問題を見つける力と問題を解決する力は欠かせません。
よく見られるのが、「こんなことがあったんですがどうすればいいでしょうか?」とリーダーにそのまま伝えるだの伝書鳩。
どうしましょう?というのは考えることを放棄しているとも言えます。
この場合は、
- あなたならどうする?と逆に質問する。
- こういう対処でいいですか?と提案するよう指導する
といった感じで部下が部下なりの答えを持つように仕向けましょう。
また、考える習慣をつけるために勉強会やディスカッションをするのもオススメです。
2) 人の良いところを見つける力を育てる
人は物事の「良い部分」より「悪い部分」の方が気になってしまうもの。
とはいえ何でも批判するクセがつくのは良くありません。
斜めからモノを見る習慣がつくと、他者の見習うべきところを見逃します。
そのために必須なのが「素直さ」です。
年齢や経験を重ねて自分のこだわりを持つようになると、異なる考えに反発しがちになります。
学びを大きくするには、
- 自分の優位性をアピールして大きく見せるより、
- 自分の足りない部分を素直に受け入れつつ、
- 異なる意見でも良いものは吸収する
というスタンスを持てるように指導しましよう。
第5章 部下が結果を出せるようになる「接し方」
ここでも、4つのタイプに分けて見ていきます。
- 困難から逃げる部下
- 注意しても直らない部下
- 優秀だけど何でも自分やろうとする部下
- ミスして落ち込んでる部下
1) 困難から逃げる部下
困難に直面すると誰かに押し付けたり逃げようとするタイプです。
その背景には「失敗への恐れ」があるはずです。
まずは失敗はチャレンジした人だけが得られる特権という価値観を伝えましょう。
イタリアサッカー界の至宝:ロベルト・バッジオ選手のこんな名言があります。
- PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ -
とはいえ、不安感からなかなか一歩を踏み出せないタイプもいます。
そんな時、リーダーがすべきことは以下の通り。
- 部下の不安を取り除く
- 失敗に寛容で挑戦しやすい土壌をつくる
- リーダー自身がチャレンジする姿を見せる
2) 注意しても直らない部下
まず、部下を注意する際は”冷静に”注意しましょう。感情的やトゲのある言い方は反抗心を抱くだけです。
そしてリーダーは問題の指摘よりも「改善されない原因」にフォーカスすべきです。
また、数回注意したくらいで諦めたらそこで試合終了です。
自分の子供が人として必要なことができてなかったら100回でも200回でも言うはず。
3) 優秀だけど何でも自分でやろうとする部下
ここでは、「人にお願いするのが苦手」と「自分でやった方が早くて確実」という2パターンに分けて解説します。
人にお願いするのが苦手
人に頼ったり任せたりするのに抵抗を感じるタイプには、ポジションごとでするべき仕事とは何かを伝える必要があります。
リーダーが雑用ばかりしてたらチームとして結果が出ないのと同じで部下たちもそれぞれのポジションで求められる役割を果たす必要があります。
苦労せずにできる作業だけこなしてる状態はラクでしょうが、給料に見合った仕事をしなければいけません。
自分でやった方が早くて確実
このタイプは一人前の意味を「1人で1から10までできること」だと勘違いしていることが多いです。
本当の一人前は人やモノなど活用できる全てのリソースを使い目的を達成できること。
リーダーは、一人前の条件を部下に共有しそのために必要なマインド・スキル・ノウハウを身につけられるよう指導していきましょう。
4) ミスして落ち込んでいる部下
人間がやる以上、仕事にミスはつきものです。
ミスした部下への接し方でやっちゃいけないのが、ミスそのものを激しく責めることです。
そうすると部下は簡単な仕事しかしなくなったり、ミスを隠そうとしてしまいます。
まずはどう対処するかを冷静に考えましょう。
ひと通り対処が終わった後は、同じミスを繰り返さないよう対策を一緒に考えます。
大事なのは「済んでしまったことはしょうがないので、これからのことを考えよう」という姿勢です。
過去と他人は変えられないけど未来と自分は変えられる。
リーダーはそのことを部下に教えてあげましょう。
まとめ:リーダーのトリセツでもあった!
今回は『部下のトリセツ』の要約についてまとめました。最後に要点を振り返りましょう。
部下が安心する「自己開示」
- 喜怒哀楽を素直に出そう
- 「負のオーラ」は出さない
- 弱点やコンプレックスはさらけ出そう
- どんどん部下から教わろう
- リーダーが学んだことを共有しよう
- 陰口は厳禁
部下が心を開く「聞き方」
- まずは話しかけやすい環境づくり
- 会議は「付箋ワーク」と「意思決定プロセス」
部下をやる気にさせる「言い方」
- 仕事の目的をちゃんと伝える
- Will・Can・Mustを区別させる
- 求められてることをハッキリさせる
- 常識や当たり前は世代によって違う
部下を成長に導く「育て方」
- 質問して部下に考えさせる
- 素直さで人の良いところに着目させる
部下が結果を出せるようになる「接し方」
- 失敗はチャレンジして得られる特権
- 数回注意したくらいで諦めない
- 全てのリソースを使い目的を達成させる
- 変えられるのは未来と自分
個人的に読んでいてハッとしたのは、「部下ができてない=リーダーもできてない」ということ。
- 部下がホウレンソウしない・・。
- 部下が感謝の言葉を言わない・・。
- 部下があいさつしない・・。
そんな時、実はリーダー自身ができていないことも多いんだそうです。
また、「リーダーは万人ウケを狙ってちゃダメだ」と著者は言います。
リーダーが万人ウケを狙い個性を押し殺していては、失うものは少ないものの得るものはないと思います。
大勢に好かれようとしているだけでは、何も達成できません。大きな結果を得るためには、リーダーの想いに共感し熱狂的に支えてくれる部下を増やしましょう。
本書は「部下のトリセツ」と同時に「リーダーのトリセツ」でもあると感じました。
部下とのジェネレーションギャップに悩んでいるリーダーはいちど本書を手に取ってみることをオススメします。
今回は以上です。