この記事で分かること
- 『職場の問題地図』の要約・感想が分かる
- 職場の問題あるある11パターンが分かる
- 職場の問題に対する改善策が分かる
ワークライフバランスという言葉が聞かれるようになって久しい昨今ですが、現実はまだまだ長時間残業や休日出勤などで溢れています。
職場の問題点を正しく捉えるには4つの観点が必要だそうです。
- 制度
- 個人スキル
- プロセス
- 場
ところが、多くの現場では「制度」と「個人スキル」の強化しか行っていないとのこと。
本書では、本当のワークライフバランスを実現するためにこの4つの観点から職場の問題あるあるを掘り下げ、改善策を提示してくれます。
それでは見ていきましょう。
もくじ
『職場の問題地図』の基本情報
まずは『職場の問題地図』の基本情報について見ていきます。
書名 :職場の問題地図 ~「で,どこから変える?」残業だらけ・休めない働き方
著者 :沢渡あまね
出版月:2016/9/16
出版社:技術評論社
定価 :¥1,378 (税込)
著者である沢渡あまねさんのプロフィールはコチラです。
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表(フリーランス)兼 株式会社なないろのはな 取締役。作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社を経て2014年秋より現業。経験職種は、ITと広報(情報システム部門/ネットワークソリューション事業部門/インターナルコミュニケーション)。現役時代、残業だらけのシステム運用チームを定時帰りの職場に変えた経験あり。
人事経験ゼロの働き方改革パートナー。現在は企業や自治体で働き方改革、社内コミュニケーション活性、マネジメント改革、業務プロセス改善の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。趣味はダムめぐり。
-Amazon著者ページより抜粋-
そもそも仕事とは「インプットを成果物に変える取り組み」で、下記5つの要素から成り立っています。
- 目的
- インプット
- 成果物
- 関係者
- 効率
仕事がうまく回らないのは、このどこかに問題がある状態だと著者は断言します。
本書を読む上では、この5要素がキーとなりますので頭に入れておきましょう。
『職場の問題地図』の要約まとめ【あるあるの宝庫】
本書は11種類の職場の問題とその改善策が記されています。
- 手戻りが多い
- 上司・部下の意識がズレてる
- 報連相できていない
- 無駄な会議が多い
- 仕事の所要時間を見積もれない
- 属人化
- 過剰サービス
- 何をどこまでやればいいのかが曖昧
- 仕事をしない人がいる
- 誰が何をやってるか分からない
- 実態が上司や経営層に伝わっていない
ひとつずつ見ていきましょう。
1丁目:手戻りが多い
手戻りとは、カンタンに言うと「やり直し」です。
手戻りが起こる原因は大きく4つあるそうです。
- いきなり100点を取ろうとする
- 状況や変化に対応できていない
- 仕事のやり方や品質がバラバラ
- レスや判断が遅い
では、手戻りを防ぐにはどうすればいいでしょうか。
ポイントは2つ。
- ポンチ絵(ささっと手書きしたラフ絵)を書いて成果物のイメージ合わせをする
- いつどのタイミングで何を報連相するか、の意識を共有しておく
双方の意識を合わせておくのが重要なんですね。
2丁目:上司・部下の意識がズレてる
上司・部下の意識ズレは双方のコミュ力や相性の問題で片付けられがちですが、それだけではいつまでも改善されません。
もう一歩踏み込んで仕事の進め方そのものに目を向ける必要があります。
- 仕事の目的を確認する
- インプットは何か確認する
- 成果物のイメージを確認する
- ラスボス(成果物を最終的に見る人)を確認する
- 進め方(期限とステップ)を提案する
といったところです。
個人的に見落としがちだと思ったのは④のラスボスです。
仕事を頼んでくる人がラスボスであることって実はほとんどないんですよね。
3丁目:報連相できていない
報連相ができていない要因は大きく3つに分けられます。
- 部下の伝えるスキルが低い
- 上司の受け止めるスキルが低い
- 報連相の場やルールがない
それぞれに応じた対策があります。
部下の伝えるスキルが低い
- 所要時間を示し、相手の都合を確かめる
- 報か連か相かをまず伝える
- 結論から伝える
- 論点を数て示す(ナンバリング)
上司の受け止めるスキルが低い
- 部下側の対策4点を、聞く側も意識する
- 復唱+感情ワードで受け止める
報連相の場やルールがない
- 報連相を定常業務のプロセスに組み込む
- 報連相のフォーマットを決める
4丁目:無駄な会議が多い
無駄な会議は当てはまる職場も多いんじゃないでしょうか。
無駄な会議が多い原因は以下のとおり。
- 会議のやり方がなっていない
- 上司の業務設計・管理スキルが低い
- 部下の伝えるスキルが低い
- 対面至上主義
- 「時間は無限だ」という上司の幻想
とはいえ、会議を完全になくすのも無理な話です。
大事なのは、無駄な会議は減らしつつ「会議の無駄」も減らすこと。
具体的な方法は以下4点です。
- 会議の目的・アウトプットを確認する
- 出席者を絞り込む
- 議事録を取りやすい発言をする
- 三本締めは「決定事項」「宿題事項」「次回予告」
5丁目:仕事の所要時間を見積もれない
仕事の所要時間を見積もれない原因はこんな感じです。
- 経験と感覚で仕事を進める(野生のカン頼み)
- 業務プロセスがない
まず必要なのは、業務プロセスという「共通の箱」を定義して仕事の始点・終点をはっきりさせることです。
また、所要時間を見積もる時は
- 一時作業と繰り返し作業を区別する
- 成果物を松竹梅で示す
の2点を意識するといいそうです。
6丁目:属人化
大前提として、属人化はなくならないものです。
そもそも人間の承認欲求は属人化を加速させる性質があるので、「属人化をどう軽減するか」を考える必要があるワケです。
まず、属人化は”してもいい部分”と”ダメな部分”があります。
- チームとして最低限やらなくてはいけない「あたりまえ領域」と
- やらなくても大丈夫だけどやった方が喜ばれる「付加価値領域」
仕事をこの2つの領域に分けたときに、「あたりまえ領域」が属人化している場合は改善する必要があります。
では具体的にどう改善すればいいか。
まず捨てられる仕事はどんどん捨てましょう。前任者の趣味やこだわりで続いていた無駄な作業は意外とあるものです。
そして、捨てられない仕事は「優先度」と「属人度」の2軸で評価して
- マニュアル化
- 自動化
- 優先度を下げる
- 人を増やす
といった方法で属人化を軽減しましょう。
7丁目:過剰サービス
「前の人はやってくれたのになんでやってくれないの?」というケースがこれです。
この問題の悲しいところは、発端がメンバーの善意や正義感だったりするところです。
良かれと思ってやったのに裏目にでる。。
過剰サービスの要因は以下3つ。
- 仕事の優先度の意識がバラバラ
- 「自分のやり方が正しい」という思い込み
- 何をどこまでやればいいのかが曖昧
そのために必要なのが「サービスレベル」です。
サービスレベルとは
- その仕事をどこまでがんばるべきか
- その仕事をどのレベルで提供すべきか
という決めごとです。
サービスレベルを定めることで仕事の範囲が明確化されます。
ではサービスレベルにどんな内容を定義すべきか、は8丁目に続きます。
8丁目:何をどこまでやればいいのかが曖昧
この背景には3つの要因が潜んでいます。
- 他部署やお客さんとの関係がなあなあ
- 上司と部下の関係がなあなあ
- 部門のミッションや役割が曖昧
残念な職場は業務設計・管理が全くできていないそうです。
本書では、そのために必要な4つのステップが紹介されています。
- 自部署のミッションと役割をきちんと理解する
- ①をチームレベルに落とし込み、目標設定する
- 目標に照らし合わせてサービスレベルを設計する
- サービスレベルを部下や関係者に浸透させる
また、サービスレベルの達成状況を測定することも忘れてはいけません。
9丁目:仕事をしない人がいる
仕事をしない人が発生するのは本人の問題だけではありません。
- 何をもって頑張ったと言えるのかが分からない
- デキる人が全部やってしまう
- 不適材不適所
- がんばったって評価されないし
- がんはらなくてもクビにならないし
といった本人を取り巻く環境も大きく影響します。
また、怖いのが「仕事をしない人は蔓延する」ということ。
自分にばかり仕事が降ってくる状況に嫌気がさして、エース社員が仕事をしなくなることもあるワケです。
とはいえ、仕事をしない人をゼロにするのは現実的ではありません。
なぜなら、「2:6:2の法則」があるからです。
2:6:2の法則とは
組織というものは
- 優秀な2割
- 普通の6割
- 残念な2割
で成り立っているという宇宙の法則です。
なので、”残念な2割は存在するもの”と受け入れてつつ、
- 人員配置を工夫したり
- 異なる特性の人たちで構成したり
- 職務分担を工夫したり
といった戦略的チーム編成が求められます。
10丁目:誰が何をやってるか分からない
この問題を放置すると、属人化や新人の孤立などの様々な病を引き起こします。
要因は以下のとおり。
- 会話がない
- 話しかけづらい空気
- 常に時間がない
- 他人のやり方を知る場がない
そうならないためには、お互いを知る「場」づくりが重要です。優秀なリーダーはよく雑談するものだそうです。
また、「もったいない!」の気持ちも大事だと述べています。
誰が何をやってるか分からない状態は、
- 実は困りごとの解決策を隣の人が持っていたり
- 実はあの人が意外なスキルを持っていたり
といった、あらゆる可能性を潰していることでもあり非常にもったいないワケです。
11丁目:実態が上司や経営層に伝わっていない
最後の問題です。
ここまで様々な職場の問題を見てきましたが、現場レベルの改善には限界があるのもまた事実。
そんな時は上司や経営層に動いてもらう必要があるワケですが、現場の由々しき実態をなかなか分かってもらえないという壁にぶち当たります。
現場の実態が伝わらない一番の要因は、結果しか報告していないことです。成果主義文化の職場ならなおさら。
そこで必要なのが「プロセス」の報告です。
- 目的
- インプット
- 成果物
- 関係者
- 効率
上記は冒頭で登場した「仕事を構成する5要素」です。
業務が回っていないときはこのどこかがうまくいってません。
それを測定して報告しましょう。
『職場の問題地図』の感想
続いて、本書を読んだ率直な感想です。
感想①:コミカルな雰囲気で分かりやすい
挿絵がコミカルでポップな雰囲気なので『職場の問題』という眉間にしわのよりそうなテーマにも関わらず終始穏やかな気持ちで読み進められました。
とはいえ内容はしっかりしており、読みながら「あ~、あるある・・。」「それなっ!」と思える点が多数ありました。
問題の原因と改善策も分かりやすいです。
感想②:属人課してもいいんだ!
個人的に一番の気づきだったのが6丁目の属人化に対する考え方でした。
「属人化は極力なくすべきもの」という固定観念を持っていましたが、
- そもそも属人化はなくならない
- 改善すべきは”あたりまえ領域”の属人化
という線引きをすることで、改善ポイントが明確になると思いました。
感想③:付加価値提供と過剰サービスの線引きかムズイ
僕の読解力が足りないだけかもしれませんが、
- 6丁目で、やらなくても大丈夫だけどやると喜ばれる「付加価値提供」と
- 7丁目で、良かれと思ってやったのに裏目にでる「過剰サービス」
この2つの違いがよく分かりませんでした。
別の言い方をすると、
- チームとして最低限やらなくてはいけない「あたりまえ領域」と
- その仕事をどのレベルで提供すべきかという「サービスレベル」
もう少し勉強しようと思います。。
まとめ:定義して管理して測定して改善する
今回は、沢渡あまねさんの著書『職場の問題地図』の要約・感想をお送りしましたがいかがだったでしょうか。
最後に、11種類の問題をおさらいしましょう。
- 手戻りが多い
⇒成果物のイメージと報連相のタイミングを共有する - 上司・部下の意識がズレてる
⇒「仕事の5要素」を基本に仕事の進め方に目を向ける - 報連相できていない
⇒上司の受け止めるスキルやルールに問題があるかも - 無駄な会議が多い
⇒無駄な会議は減らしつつ「会議の無駄」も減らす - 仕事の所要時間を見積もれない
⇒業務プロセスで仕事の始点・終点をはっきり定義する - 属人化
⇒「あたりまえ領域」が属人化してるなら改善を - 過剰サービス
⇒サービスレベルを定めて仕事の範囲を明確化する - 何をどこまでやればいいのかが曖昧
⇒サービスレベルを部下や関係者に浸透させる - 仕事をしない人がいる
⇒残念な2割は存在する前提で戦略的なチーム編成を - 誰が何をやってるか分からない
⇒雑談でもいいからお互いを知る「場」をつくろう - 実態が上司や経営層に伝わっていない
⇒結果だけでなくプロセスも報告する
本書では、
- 定義できないものは管理できない
- 管理できないものは測定できない
- 測定できないものは改善できない
というWエドワーズデミング博士の言葉が繰り返し登場します。
業務がきちんと回り続ける状態にするには
- 何を測定するのか定義し日々の業務を測定する
- それを上層部へ報告し改善につながる
このサイクルが職場とメンバーをより良くするということでした。
自分の職場に当てはまる問題があった方は、本書をいちど手に取ってみることをオススメします。
audiobook.jpで本を聴こう
読書時間がない! 活字を読むと眠くなる! なんて方にはオーディオブックもおすすめです。
本を朗読してくれるサービス(audiobook.jp)なら伝え方の極意をナレーターの朗読で学べます。
しかも初回は1ヵ月無料体験で聴き放題です。
この機会に『聴く読書』を体験してみてはいかがでしょうか。
\月額¥750で聴き放題はコスパ最強!/audiobook.jp公式サイトへ
-
audiobook.jpなら聴き放題がおすすめ【半年使った感想】
続きを見る
今回は以上です。