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渋沢栄一『現代語訳:論語と算盤』第9章「教育と情詛」の要約まとめ

渋沢栄一『現代語訳:論語と算盤』第9章「教育と情詛」の要約まとめ

 

日本実業界の父・渋沢栄一の著書『論語と算盤』の要約を、各章ごとにシリーズでお送りしております。

 

今回は、第9章「教育と情詛」です。

 

各章に順序性はないためどこから読んでも大丈夫ですが、前章をまだ読んでない方は上のリンクから各記事へジャンプできるのでよかったらどうぞ。

 

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【論語と算盤】第9章「教育と情詛」の要約

 

第9章のメニューは以下の通りです。

  1. 孝行は強制するものではない
  2. 現代教育の得たもの、失ったもの
  3. 偉人とその母
  4. 理論より実際
  5. 人材余りになる大きな原因

 

では順番に見ていきましょう。

 

①孝行は強制するものではない

渋沢は「孝行」に関して、親から子に対して「孝行しなさい」と強制するのはかえって子供を親不孝に追い込んでしまう、と主張します。

親は自分の気持ちひとつで子供を親孝行にもできるし親不孝にもできてしまいます。

自分の思い通りにならない子供を親不孝と考えるのは大きな間違いです。

 

実際、渋沢栄一の父親も栄一に孝行を強制せずに、自分の志に向かって自由に進ませてくれたから親不孝にならずに済んだ、と自身を振り返っています。

孝行は親がさせてくれて初めて子供ができるもの

子供が孝行するのではなく、親が子に孝行させるのです。

 

②現代教育の得たもの、失ったもの

「昔の青年は立派だったが、今の青年は軽薄で元気がない。」という意見がしばしば出ますが、一概にそうとは言えないと渋沢は主張します。

なぜならそれは、昔の数少ない偉い青年と今の一般の青年とを比較しているからです。

昔は少数でもいいから偉い者を出すという”天才教育”でしたが、今は多数の者を平均して教える”常識的教育”に変わっているため、単純に比較できるものではありません。

 

とはいえ、今の青年は昔に比べ多くの教師に接するためか師匠を尊敬していません。

そして教師の方も教え子を愛していない様子が見られます。

 

昔は「心」の学問が中心でした。

  • 「仁」・・物事を健やかに育む
  • 「義」・・みんなのためを考える
  • 「礼」・・礼儀を身につける
  • 「智」・・物事の内実を見通す
  • 「信」・・信頼される

という5つの道徳を押し広げることで、自然と自分を磨き天下国家のことを心配していたものです。

 

これに対して今の教育は「知識」を重視しています。

しかもコレと言った目的もなく、何となく学問をしている感じです。

だからこそ、今の青年は「将来どのような専門学科を学ぶべきか」という目的を早い段階で決めておくべきです。

 

底の浅い虚栄心のために自身の身の振り方を誤ってしまうと、国家の衰退を招くことにも繋がります。

 

③偉人とその母

今の時代、女性だからといって教育を疎かにしてはいけません

子育ての観点からも、知恵や道徳の備わった母親は善良な国民を育てる基となります。

 

江戸時代の女性は消極的でつつましくいることが重視されていて、まだそういう教育を受けてきた女性が今日の社会の大半を占めています。

明治に入り女性への教育もいくらか進歩しましたが、まだまだ過渡期です。

だからこそ、女性にも国民としての知恵や道徳を与え、共に助け合っていかなければいけません

 

④理論より実際

今の教育のやり方を見ていると、知識を授けることに重点を置きすぎて道徳を育む力が欠けていると言えます。

そもそも今の教育は科目が多すぎです。これでは人格や常識を身につける時間がないのは当然の流れです。

 

またそれは実業界でも同じことが言えます。

近頃は実業教育に対する関心が高まってきましたが、その教育方法は理論や知識一辺倒になりがちで、道徳や正義が欠乏してしまってます

 

確かに知識や理論も大事ですが、実業の世界では軍事の事務のようにいちいち上官の命令を待っているとチャンスを逃しやすいものです。

実業界に進もうとする者はこの性質をよく理解しておく必要があります。

 

⑤人材余りになる大きな原因

経済の世界には「需要」と「供給」の原則があり、それは実社会の人間にも適用できます。

今の日本は、”ビジネスの規模”という需要は限られているのに、”人材”という供給は年々多くの学校で行われています

 

特に、今は高度な教育を受けた人材の供給が多すぎます。

高度な教育を受けて立派な事業に従事したいと希望を抱く人が多いのは個人的には嬉しいことですが、国家の立場から見ると必ずしも喜べる現象ではありません。

なぜなら社会には

  • 主に人を使う側と
  • 人に使われる側

の人材が必要ですが、多くの学生が少数のパイしかない「人を使う側」を志しています。

数が必要なのは人に使われる側の人材です。

また、人に使われる側も様々なタイプの人材が必要ですが、むやみに詰め込む知識教育により似たり寄ったりの人材ばかり生まれるようになりました。

 

渋沢は教育の専門家ではありませんが、そのような教育は完全ではないのではと主張します。

 

 

【論語と算盤】第9章「教育と情詛」まとめ

【論語と算盤】まとめ

 

最後に、第9章「教育と情詛」の要点をざっくり振り返ります。

  • 孝行は親がさせてくれて初めて子供ができるもの
  • ”なんとなく”ではなく目的を持って学問に励もう
  • 女性教育を疎かにしてはいけない
  •  知識一辺倒で「心」が欠乏していけません
  • 国家の成長には「人に使われる側」の人材も必要

 

最後まで読んで頂きありがとうございます!

第10章はコチラからどうぞ!

 

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渋沢イズムをより深く知りたい方は本書をいちど手に取ってみることをオススメします。

 

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今回は以上です。

 

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