日本実業界の父・渋沢栄一の著書『論語と算盤』の要約を、各章ごとにシリーズでお送りしております。
各章に順序性はないためどこから読んでも大丈夫ですが、前章をまだ読んでない方は上のリンクから各記事へジャンプできるのでよかったらどうぞ。
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もくじ
【論語と算盤】第7章「算盤と権利」の要約
第7章のメニューは以下の通りです。
- 仁を実践するにあたっては、自分の師匠にも遠慮しない
- 「思いやりの道」をただ進むだけだ
- 競争の善意と悪意
- 合理的な経営
では順番に見ていきましょう。
①仁を実践するにあたっては、自分の師匠にも遠慮しない
世の中には、”「論語」の考えはキリスト教などと比べて権利思想が希薄だ”という意見もありますが、孔子はもともと宗教家じゃなかったから当然の話と言えます。
そもそも孔子の生きてきた時代の中国は、義務を先にして権利を後にする風潮があったので、背景の違うキリストと比べてもしょうがないのです。
とはいえ、論語にもこんな一句があります。
「仁を実践するにあたっては、師匠にも譲らない」
仁に対しては尊敬する師匠にすら譲らなくてよい、という権利思想がみなぎっています。
この一句に限らず、論語にも権利思想を含む言葉はたくさん含まれています。
また、渋沢が論語を高く信頼している要素のひとつが奇蹟が1つもないことです。
キリストにせよ釈迦にせよ奇蹟がたくさんあるため、迷信に陥ってしまいがちだそうです。
②「思いやりの道」をただ進むだけだ
貧富の差をむやみやたらとなくそうとして、法を設けて権利や義務を明らかにする動きが見られますが、貧富の差は多かれ少なかれいつの時代にも存在するものです。
それを法で整備しようというのは無理な話。
個人が豊かになろうとするから日々努力するようになり、結果として国家が発展するのが自然の成り行きというものです。
とはいえ、”自然の成り行き”に流されるまま放置するのも考えものです。
そこで大事なのは「思いやりの道」です。
資本家と労働者の間もお互いが「思いやりの道」を持っていれば、百の法律よりも千の規律よりも優れているはずです。
③競争の善意と悪意
そもそも何かを一生懸命やるためには”競う”ことが必要になりますが、競争は善意と悪意の2種類あります。
簡単に言えば、
- 知恵と勉強で他者に打ち勝とうとするのは良い競争で
- 他者の真似をして成果を奪い取ろうとするのは悪い競争
ということ。
悪い競争に携わった場合、一時的な利益は得られるかもしれませんが結果的には自分の損失につながるものです。
それどころか、国家にまで蔓延して「日本の商人は困りものだ」と海外から見られかねません。
そのためには、お互いが商業道徳を尊重するという強い意志を持つ必要があります。
とはいえ、「道徳」というものをあまり難しく考える必要はありません。
- 約束の時間に遅れないようしたり
- 人に道を譲ったり
といった日常的な行いも立派な道徳です。
つまり、商売は絶えざる自己開発と気配りを続けつつ進歩していかなけれならないのです。
④合理的な経営
現代の実業界には、ときどき「悪徳重役」のような人物が現れます。
- 自分の虚栄心のために重役になったり
- 経営手腕のない者が重役になったり
そのくらいなら大した罪悪を重ねる心配はありませんが、会社の資産を自分のもののように使い自分の利益にするような人間もいます。
- 実態のない利益を計上し虚偽の配当を行ったり
- 会社の金を流用して個人の事業に使ったり
といった「詐欺」や「窃盗」のようなケースもあります。
結局このような悪事は、重役が道徳を身に着ける努力をしなかったために起こった弊害です。
渋沢栄一は、「一個人の利益よりも、多くの人や社会全体の利益になる仕事をすべきだ」という考え方を事業を行ううえでの見識としています。
そうでなければ正しくまともな事業とは言えません。
【論語と算盤】第7章「算盤と権利」まとめ
最後に、第7章「算盤と権利」の要点をざっくり振り返ります。
- 仁を実践するにあたっては、師匠にも譲らない
- 貧富の差は付き物。大切なのは思いやりの心
- 商売は絶えざる自己開発と気配りを続けるべし
- 正しい事業は個人ではなく社会の利益になる仕事
第8章はコチラからどうぞ!
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渋沢イズムをより深く知りたい方は本書をいちど手に取ってみることをオススメします。
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今回は以上です。