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渋沢栄一『現代語訳:論語と算盤』第8章「実務と士道」の要約まとめ

渋沢栄一『現代語訳:論語と算盤』第8章「実務と士道」の要約まとめ

 

日本実業界の父・渋沢栄一の著書『論語と算盤』の要約を、各章ごとにシリーズでお送りしております。

 

今回は、第8章「実務と士道」です。

 

各章に順序性はないためどこから読んでも大丈夫ですが、前章をまだ読んでない方は上のリンクから各記事へジャンプできるのでよかったらどうぞ。

 

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【論語と算盤】第8章「実務と士道」の要約

 

第8章のメニューは以下の通りです。

  1. 武士道とは実業道だ
  2. 模倣の時代に別れを告げよう
  3. 果たして誰の責任なのか
  4. 利益を追求する学問のマイナス面をなくしていくべきだ
  5. こんな誤解がある

 

では順番に見ていきましょう。

 

①武士道とは実業道だ

  • 正義・・みなが認めた正しさ
  • 廉直・・心がきれいでまっすぐなこと
  • 義俠・・弱きを助ける心意気
  • 敢為・・困難に負けない意志
  • 礼譲・・礼儀と譲り合い

上記は武士道のもっとも重要な習わしです。

これからの時代、武士道は実業道といい換えた方がいいのでは、と渋沢は主張します。

なぜなら、武士道こそが日本の代表的な長所だったにも関わらず、武家社会だけで行われ商工業者たちには重んじられていなかったからです。

商工業者は武士道を大事にしていては商売は立ち行かないという風潮すらありました。

 

孔子の言葉も、紐解くと武士道と重なる部分が多くありますが、日本の商工業者は生き方の本筋を外れ私利私欲を満たそうとしています。

ヨーロッパの商工業者たちは固い道徳心のもとで商売を実践し文明国となっていますが、日本人の道徳心のなさを非難し、商取引でも完全に信用してはくれません。

これは国家にとって大きな損失です。

 

ヤマト魂の生まれ変わりである武士道こそが日本人の心とすべきであり、それは商工業者も例外ではないのです

 

②模倣の時代に別れを告げよう

日本人の今すぐやめるべき悪習が、欧米心酔による外国製品の偏重です。

舶来品ばかり愛好し国産品をダメだという考えがとても強いです。

明治維新から半世紀が経ち世界の一等国と自負している今日においては、模倣の時代に別れを告げ自ら創造する国民になる必要があります。

 

とはいえ、むやみに外国製品を排除しようと言ってるわけではありません。

「有無相通」といって、あるものとないものをお互いに融通し合うのが経済の原則のひとつです

  • 自国で作れるモノは自作し
  • 海外にも売りつつ
  • 必要なモノは輸入する

そうすれば国内産業もより発展するはずです。

 

③果たして誰の責任なのか

明治維新以降、物質的な文明は大きく進歩しましたが、商工業者の道徳観念はさほど進歩したとは言えません。

商業道徳を物質的な文明の進歩と肩を並べられるようにするには、各々が自分を磨くよう心掛ける必要があるのは言うまでもありません。

 

とはいえ、もう少し違った一面から見てみようと思います。

 

道徳と一括りに言っても、日本と西洋とでは重視しているものが異なるため、単に外国の風習を見てそれを取り入れようとしても無理が出てきます

  • 外国の風習をよく観察しつつも
  • 日本古来の慣習と照らし合わせて
  • これからの日本に相応しい道徳を育てる

という考え方が必要です。

 

④利益を追求する学問のマイナス面をなくしていくべきだ

ヤマト魂や武士道を誇りとするわが日本で、商工業者に道徳観念が乏しいのはとても悲しいことです。

しかし、その原因を探っていくと昔からの教育にあるのではないかと思われます。

 

江戸時代に定着していた朱子学の考え方は、

・儒者は聖人の学問を説く立場

・一般の人々はそれを実践する立場

と区別していました。

 

つまり、道徳は治める側の人間が身に付けておけばよく、農民や商人は課せられた仕事をサボらなければそれで良いという考えが染み付いてしまったワケです。

しかも欧米から入ってくる新しい文明は、道徳観念の乏しい日本の商工業者が利益追求の道に進む悪習を助長しちゃってます。

 

そこで、商業道徳の要である「信用」の威力を宣伝していかなければなりません。

「信用こそすべてのもと。ひとつの信用も、その力はすべてに匹敵する」

ということを理解させ、経済界の基礎を固めていく必要があります。

 

⑤こんな誤解がある

物事には競争が付き物で、競馬やボートレースとなると命をかけるほど熱狂的になる人もいます。

自分の財産を増やすのも同じで、「あいつより財産を多く持ちたい」と欲望は誰しもに潜んでるものです。

これが極端になると道徳観念を忘れてしまい、目的のために手段を選ばない人間になってしまいます。

 

結局、経済活動は道徳と無関係な人(治められる側)が携わるため「商業は罪悪だ」という風潮が300年続いてしまったのです。

また、当初は単純な本質を守っていればよかった武士も商人も、次第に形式のみ繁雑になっていき、嘘が横行する世の中となってしまいました。

 

 

【論語と算盤】第8章「実務と士道」まとめ

【論語と算盤】まとめ

 

最後に、第8章「実務と士道」の要点をざっくり振り返ります。

  • 商工業者も武士道精神を持つべし
  • 模倣の時代に別れを告げ自ら創造する国民に
  • 日本には日本に相応しい道徳を育てよう
  • 商業道徳の要である「信用」である
  • 競争が極端になると道徳を忘れウソが横行する

 

最後まで読んで頂きありがとうございます!

第9章はコチラからどうぞ!

 

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渋沢イズムをより深く知りたい方は本書をいちど手に取ってみることをオススメします。

 

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今回は以上です。

 

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